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„森村泰昌:自画像の美術史―「私」と「わたし」が出会うとき” 国立国際美術館, Osaka

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年に一度の里帰りで先月末から日本に来ているが、最初に西日本を1週間ほど旅行することにして、まず新幹線で大阪に入った。そしてタイミング良く開催中の国立国際美術館 The National Museum of Art, Osaka の„森村泰昌:自画像の美術史 ―「私」と「わたし」が出会うとき”を観ることができた。
森村氏を私が初めて意識したのは約20年前、母校女子美術大学の学園祭にゲストとして招かれた講演会を拝見した時だった。当時は失礼ながら「コスプレのアーティスト」のような先入観しかなかったのだが、とてもお話が上手な方で、その時公開されたビデオが大変面白かったのを記憶している。


ー「自画像」をテーマに自分自身を撮る。それは、大きな美術の歴史に、ひとりの美術家のささやかな人生を立ち向かわせること、楽しくもあり恐ろしくもある。その30年間の成果を一挙公開いたします。(森村) ー
いつも思うが、森村氏の言葉はとてもシンプルで分かりやすい。誰にでも理解してもらえるようにという気遣いが感じられる。地元大阪では初めての大規模個展は11の部屋からなる第1部と70分の長編映画の第2部との構成で、新作30点を含む計130点展示という大変見応えのあるものだった。
「『森村泰昌展』は撮影OK!! SNSで展覧会の様子をシェアしませんか?」というポスターが貼ってあったので、ここでいくつかの画像と共に少し紹介させていただきたいと思う。

最初の部屋は「美術史を知らなかったころの『わたし』がいる」というテーマで、美術家になる前の子供時代からの写真が数点飾ってあった。素の表情は笑顔が素敵で、仮装や化粧をしなくても普段から絵になる外見の方なのだなと思った。

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そしておなじみの西洋美術史教科書に出て来るようなポートレートがずらっと並ぶ。ダ・ヴィンチ、デューラー、カラヴァッジョ、ゴッホ、ダリなどなど。そしてレンブラントの赤い部屋、ゴヤの緑の部屋と続く。空間ごとに壁の色を変えた展示方法は成功していて、次の部屋への期待が膨らんだ。

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そして特に印象的だったのはフリーダ・カーロの黄色い部屋。極彩色の花輪の中の自画像について、昔の日本ではお店が開店する時やまた葬式でも花輪が飾られる風習があり、何かが生まれる時と死ぬ時の両方に使われたことを思い、生死に終生向かい合ったフリーダ・カーロを花輪で飾りたいと思った、という氏の説明があり、ぐっと胸に響いた。花輪のデザインも様々で、自画像との組み合わせに考慮されただろう時間を想った。それにしても本当に女装姿が美しい人だと思う。

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新作の日本近代美術作家の自画像(松本竣介、青木繁、萬鉄五郎、村山槐多など)の部屋も新しい印象を受け、今回特別な想いを持って制作されたのではという気がした。そして20世紀の日本、世界の美術へと続く。山口小夜子に扮した姿もやっぱり超美しかった。

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ロシアのエルミタージュ美術館が、第二次大戦時に爆撃の被害を恐れ、百数十万点の美術品を山奥に疎開させ、美術館には空の額縁だけが残されたという史実を基に制作された「『私』の消滅」というタイトルの部屋も特異で印象に残った。壁掛けではなくイーゼルでの展示がさらに不思議な特別感を演出していた。

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今回時間がなくて、残念ながら第2部の映像作品を観ることができなかったが、第1部も年代的にストーリーを組み立てられていて、中世から現代までの美術史を改めて勉強させてもらったような満足感があった。この展覧会でどれだけの若い人達に過去の名画や大作家達を紹介したか、その影響力を思った。ひとりで何人もの人に扮し、これだけ全てをさらけ出しても、まだまだ新しい可能性を探り続ける森村氏の姿勢に心打たれる。新しい部屋に入るたびにまたやられたという印象を受けるユニークで精巧な表現、完璧な虚構の世界に誘う独特なエンターテイメント性はさすが。2か月続いた展覧会は今日が最終日。

今回一泊だけの大阪滞在だったが、大阪駅周辺の延々と続く地下街や古い商店街がとても面白く、改めて商業都市だなと思った。また中国人や韓国人の観光客がとても多くて驚いた。東京と比べると雑多だけれど買い物しやすく活気がある風情が、特にアジアからの外国人にウケるのではと大阪在住の友人も言っていた。街を歩くたびにエンドレスに続く様々なお店の風景と森村氏の多彩な作風はどこか重なる気がして、短い時間だったけれど大阪という町が持つカラフルなエネルギーを沢山浴びることができたように思う。

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国立国際美術館のエントランスの様子



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# by mikimics | 2016-06-19 09:57 | museum | Comments(0)

第15回 „Japan Tag” に向けた展覧会のお知らせ

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デュッセルドルフで毎年初夏の頃にJapan Tag 日本デーという市主催の日本文化のお祭りが開催されます。ライン川沿いに沢山の食事の屋台や催し物ブースが立ち並び、生け花や書道の展示、着物の着付け、和小物販売などが数多く行われたり、旧市街の中心に設営された舞台で日本人ミュージシャンや邦楽家の演奏、武道などスポーツの演武の披露もあり、マンガ、アニメ、コスプレなどのサブカルチャー好きな若者もドイツ全国から集まります。そして夜は日本から招待された花火師による打ち上げ花火でクライマックスを迎えるという、毎年50万人以上もの訪問者が訪れるビッグイベントです。

今年は今週末5月21日(土)に開催される、第15回Japan Tagに向けて、旧市街にある創業150年以上の老舗の額屋CONZEN コンツェンのショールームにて、
日本とゆかりのある5名のアーティストの作品を集めた展覧会が開催される運びになり、私もそちらに20点作品を展示いたします。このCONZENは歌川広重の版画をかなりお持ちで、この機会に展示されるそうです。刷り上った招待状を受け取った時、まさか1854年作の広重作品の左横に自分の絵が並べ
られるとは想像もしていなかったので驚きましたが(笑)、ドイツ人達から見れば広重も私も同じ日本人な訳で、これも外国暮らしならではの経験かと思いました。また額屋での展覧会なので、私の作品も全て先方が最適な額装をして下さることになっており、普段は額なしで直接壁掛け展示が多い私にとって初めての試みのため、オープニングでの作品との再会が楽しみでもあります。

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For „15th Japan Day” (a Japanese culture festival in Dusseldorf) the traditional picture frame shop CONZEN in the Dusseldorf Altstadt will hold an exhibition. They will show the artworks of five artists related to Japan. I will exhibit my 20 works, too, and I would be grateful if you could see there.

Japanische Impressionen 日本の印象 bei CONZEN am Carlsplatz
出品作家:歌川広重、こやましげよし、たけうちまさみ、Andreas Hentrich、寺尾美紀
2016年5月19日(木)- 6月30日(木)
オープニングパーティー: 5月19日(木)18:00より

CONZEN am Carlsplatz
Benrather Straße 8 / 40213 Düsseldorf
Mon-Wed: 10:00-18:30 / Thu-Fri: 10:00-19:00 / Sat: 10:00-16:00


お時間がございましたらどうぞご高覧下さいますようお願い申し上げます。


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出品作 „Spring garden in R” (24x33cm, Pigment on Japanese paper 2016)



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# by mikimics | 2016-05-18 06:18 | information | Comments(0)

ひと月遅れのRosenmontagszug カーニバルパレード

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デュッセルドルフで欠かせない行事のひとつとして、Karneval カーニバルがある。
世界的にはリオやヴェネチアのカーニバルが有名だが、ドイツもいくつかのカトリック地域では町全体で祝い、特にKöln ケルン、Mainz マインツ、Düsseldorf デュッセルドルフなどは大規模に盛り上がることで有名。主に南部の都市での習慣なので、同じドイツでも北部では行われることはなく、ベルリンやハンブルグなどの大都市でさえも祝わない。
カーニバルは正式には11月11日11時11分からスタートするが、実際のお祭りはイースターの6週間前の2月~3月で、木曜日からスタートし翌週火曜日まで6日間続く。人々は仮装して街に出て、昼間からお酒を飲み踊り歌い、とにかく町全体が無礼講になる。町中酔っ払いだらけになって本気で危険なこともあるので、警察のパトロール数も多くなる。でも何でもありの雰囲気を利用して、良い出会いのチャンスを狙ってくる人も多く、私達の友人でもカーニバルで出会って結婚したカップルもいる。

初日の木曜日はレディースデイで女性が主役の日。女性は男性のネクタイをはさみで切ったり、お酒をご馳走してもらうのは当たり前。私の初めてのカーニバルは夫と女友達と出掛けたが、友達と私は知らない男性達から何杯もビールをおごってもらって、なかなかいい気分だった。代わりに夫は知らない女性達におごらされていたけれど。笑
そして5日目の月曜日、Rosenmontag(薔薇の月曜日)にカーニバルはフィナーレを迎える。昼頃から数時間、きれいに飾られた70台以上もの山車が大通りをねり歩くパレードがある。山車は毎年新しく制作され、現在ホットな話題をテーマにしたものや政治を風刺したものが多く、全国ネットのニュースでも報道される。そして「Helau!(ヘラウ!)」「Kamelle!(カメレ!)」 など、カーニバル時だけの特別な掛け声をあげて、皆持参した袋に山車から投げられるお菓子を拾い集めるという、大人にも子供にも楽しい催し。(このパレードに関してのドイツ大使館の分かりやすい説明はこちら

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今年デュッセルドルフでは大変珍しいことが起こり、2月8日に予定されていた薔薇の月曜日のカーニバルパレードが暴風雨のために中止になった。こんなことは戦後2回目、26年ぶりのことだったそう。でも山車を制作する業者も1年前から準備をしているし、配るお菓子を大量に用意したスポンサー達も大損害を被るし、とにかく市民にとって残念すぎるので、1ヵ月後の3月13日(日)に延期になると発表された。

本来パレードは、毎日お祭りの雰囲気が高まり、5日目に気分が最高潮に達した所で祝うもの。今年はフィナーレなしでカーニバルが終わり、1ヵ月後に突然1日だけフィナーレを迎えるというのは、どんなものなのだろう?盛り上がるのだろうか?とちょっと半信半疑だった。でも実際はお天気に恵まれたこともあって、街に出ると噓のように完璧なカーニバル雰囲気になっていて、みんなよくやるな~とおかしくなった。ドイツ人達は仕事もしっかりするけれど、遊ぶ時は本気で遊ぶ。カーニバルに対するデュッセルドルファーの思い入れと底力を見たようで、なんだか妙に感心してしまった。

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毎年我が家も必ずこのパレードを観に行くが、今年は旧市街の中心の良い場所に行ったこともあり、また偶然私達の周辺にあまり子供がいなくて、周りの人達が取ったお菓子をたくさん娘にくれたのもあって、例年にない量のお菓子を持ち帰った。こんなにたくさん食べきれないので、しばらく我が家の教室に来る子供達にも配りまくるつもり。

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カーニバルは私達外国人にとっては、クレイジーな馬鹿騒ぎにしか見えず理解できない人も多くて、この時期はあっさり旅行に行き町を離れる人も少なくない。うちの夫は必ず仕事をしっかり休んで本気で楽しむ派で、私も最初の数年は毎年増える仮装の衣装にちょっと辟易していたけれど、さすがに8回経験すると慣れたこともあり、また子供と一緒だと別の楽しみも生まれて、年に一度の大事な行事と思えるようになった。
カーニバルの衣装はデパートでもどこでも買えるが、クリエイティブで美しい自作衣装や、思わず感心してしまうアイディア衣装の人達は良いなと思うし、さりげなく仮装をしてとても楽しそうにペアで踊る老夫婦なども、ただ素敵だと思う。何より子供達の仮装は本当にかわいい。
4年前、ベビーサイズの衣装を着せて初めて娘と一緒に街に出たカーニバルの写真を見ると、瞬時に色んな記憶がよみがえる。また今年のパレードでは、私達の向かいに偶然いた難民の家族らしい人達、子供達が嬉しそうにお菓子を取っている姿が見えて微笑ましかった。それぞれの年ならではでの思い出を重ねて、年々感慨深くなっていく行事と言えるかも知れない。


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# by mikimics | 2016-03-22 19:10 | life | Comments(0)

„Munch : Van Gogh” Van Gogh Museum, Amsterdam

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随分前のことになってしまったが、昨年暮れにAmsterdam アムステルダムで観た展覧会について。
アムステルダムにはデュッセルドルフから車で3時間ほどなのに、機会がなくて今回ドイツに住んで初めて行った。私が前回訪れたのは学生の時で、正に20年ぶりの滞在。オランダの町並みはドイツとはまた違った魅力があり、とても楽しい3日間だった。

企画展„Munch : Van Gogh” を観にVan Gogh Museumへ。Edvard Munck エドヴァルド・ムンクの作品を欧州各地から集め、ゴッホの作品と一緒に展示するというもの。ゴッホ美術館は大変混むな…と思ったが、なかなか観られない企画だと感じたので早起きして向かった。20年前には本館の建物しかなかったけれど、企画展は1999年に黒川紀章設計でオープンした別館での展示で、楕円形ガラス張りのエントランスは明るく美しかった。別館の最上階はSompo Japan Nipponkoa Galleryという名前が付いていて、この美術館の運営に日本人もかなり関係しているんだなと思った。


会場に入るとまずムンクとゴッホのそれぞれの自画像と、壁に貼られたムンクの言葉が目に入った。
„During his short life, Van Gogh did not allow his flame to go out. Fire and embers were his brusches. I have thought, and wished, that I would not let my flame go out, and with a burning brush paint until the end.”
ヴァン・ゴッホは彼の短い人生の間で、情熱を絶やすことを許さなかった。情熱の炎と残り火が彼の画法だった。私は自分の熱情を失わせることなく最期の時まで燃えるような筆で絵を描きたいと思い願っている。

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そして全体にわたって同じように、似たテーマの作品や制作年が同時期のものなどを並べて展示しており、予想以上に内容の濃い、作品の質量共にすばらしい展覧会だった。
1853年生まれのオランダ人ゴッホ、1863年生まれのノルウェー人ムンクは、1880年代後半に夢を抱いてパリにやって来る。同じ頃に芸術の都に来て、同じような場所に通い、交友関係も似ていたのに、生前出会うことはなかった二人。
これまで作風も色合いも似た印象はなかったけれど、並べて展示しても全然違和感のない見応えあるコラボレーションになっていて、キュレーターの力を感じた。「叫び」で有名なムンクの絵は、死、孤独、嫉妬など人間の暗部をテーマにしたものが多いけれど、色彩は鮮やかでハッとするような美しい配色もよくあり認識を新たにした。色彩表現もきれいだったけれど、個人的には白と黒のコントラストで上手く構成した木版画もとても気に入った。
またゴッホもアルルの風景など、戸外で描かれた風景画が多いが、ムンクもノルウェーの神秘的で謎めいた雪景色などよく描いていて印象的だった。企画展の後、本館のゴッホ常設展も観たが、37歳でピストル自殺した彼の人生で、現存する膨大な量の作品は1880年~1890年のたった10年間で描かれたものだったと改めて知り驚いた。唯一の理解者弟テオに宛てた、びっしりと細かく美しい字で書かれた手紙には、作品の構想スケッチもよく描かれていて魅力があり、観ていて飽きなかった。


~ゴッホ美術館の予約システムについて(2015年末状況)~
混雑必至の美術館なので、Eチケット予約するつもりだったが、私がチェックした時は前日のためか美術館の公式HPからはもう予約不可だった。ただ世界中の旅行代理店が発行しているバウチャーは前日でも申し込めたが、英語、ドイツ語、日本語、どれも情報があり過ぎて何を信用したらいいのか分からなかったので、私は何も買わずに開館時刻に美術館に行った。すると入場者は3種類の列に分かれて待つシステムになっていて(Blue lane:公式HPにて予約済グループ Yellow lane:代理店バウチャー持参グループ Green lane:全く予約なしグループ)、公式予約組は直接別館入り口へほとんど待たずに通され、それ以外の2グループは同じチケット発券所へ列に並んで待つ仕組み。そしてバウチャー組を7割先に通して、予約なし組みを3割通すというサイクルで進み、私は結局40分程待って入場できた。クリスマス休暇のシーズンでこうなので、夏の繁忙期はどのくらいか想像できない。時間を無駄にしたくない方は、バウチャーでもどんな形でも良いので、オンライン予約をしていくことをお勧めします。


この美術館は、町の中心のMuseumplein(ミュージアム広場)に面していて、2013年に10年ぶりに再オープンされた、17世紀オランダ絵画コレクションで有名なRijksmuseum アムステルダム国立美術館や、近現代美術コレクションのStederijk Museum アムステルダム市立美術館も隣接している。前日に行った国立美術館もかなり混んでいたけれど、好きなフェルメールやフランス・ハルスが観られて満足。この時期、国立美術館裏に簡易スケートリンクも設置されていて、クリスマスの良い雰囲気を楽しめた。

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アムステルダムの街並みはエレガントで、戦争で破壊されなかったため古い建物も多く残っており、ドイツとはまた違った建築様式が美しかった。ブロックごとに運河が現れる風景は昼も夜も絵になって、歩いてもとても楽しかった。インターナショナルな町で人は普通に英語を話し、そして街中は時々フッとマリファナの香りが漂って来たりして、、、やはりドイツとは違うなと思った。
ヨーロッパの多様性は本当にはかり知れなくて、お隣の国でもこんなに異なり、そしてとても気軽に来られるのだから、もっと色々観に回らねばと改めて感じた年末だった。

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# by mikimics | 2016-02-29 20:09 | museum | Comments(2)

ロブスター写生 Drawing a lobster

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我がアトリエの小学生絵画クラスで先日「ロブスター写生」をしました。
年に一度ほど、鮮魚などをモチーフに写生観察をする授業を行います。魚屋に行って何にするか物色し、鯛や虹マスも魅力的でしたが、滅多に描くことはないだろうロブスターを選んでみました。
In my atelier elementary school kids have drawn a lobster. Once a year I prepare fresh fishes or seafood as a theme of drawing. Through observation of nature's creatures they can learn many things.

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冒頭の作品は9歳女子のもの。画面に大きくエビを入れて、構図の良いおおらかな印象の絵になりました。

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10歳男子作品。何度も甲羅を触ったり、足をくにくに動かしてみたり、とにかく観察して良く描きました。

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6歳男子作品。細部観察が大変そうでしたが、部分的に6歳児なりの表現があってかわいらしく魅力的。


そして今回、部屋にロブスターを90分置いてみて、私達は不思議な感覚を体験しました。
エビが部屋にあると、確かににおいます。最初はとてもエビ臭いなと感じるのですが、しばらくすると鼻が慣れて感じなくなります。でも時々フッとまたエビのにおいが鼻先によみがえります。そしてまた感じなくなって、、、とその周期が10分おきくらいにやって来るのでした。
そのことを最初に指摘したのは10歳男の子でした。そして私も確かにそう感じたので、どうしてなんだろうね?と皆で不思議に思いました。気流の関係?嗅覚の仕業?でも今回わざわざ本物のロブスターを買って来たのは、何より五感でモチーフを感じて欲しかったからで、絵とは視覚だけで描くものではないということ、嗅覚も触覚も聴覚も味覚もすべてが影響することを体験して欲しかったからです。きっとこのにおいの記憶も、彼らの絵の中に凝縮されていると思います。


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おまけ:我が4歳娘の写生。彼女は小学生クラスに参加していないのですが、授業後に「このえびさん、もうお料理しちゃうけど、その前に描いてみる?」と聞くと、「うん、かく!」と言うので、紙とクレヨンだけ渡して私が夕飯の準備をしている間に自由に描きました。骨格的に間違いもありますが、身体の各部位の朱色の違いなど、結構観察しているかなと思います。


大人気のモデルは最後はスープにして美味しくいただき、おかげで平日にしては豪華な夕食になりました。私達の五感を刺激してくれたロブスター、どうもありがとう!

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# by mikimics | 2016-02-24 18:25 | art class | Comments(0)

„Japans Liebe zum Impressionismus” Bundeskunsthalle, Bonn

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先週、日本に関係した珍しい展覧会を観に、電車で1時間ほど少し遠出してBonn ボンへ。
町の中心部にMuseumsmeile(博物館通り)と言われる一角があり、良い博物館美術館がいくつも並んでいる。その中の一つ、Kunst- und Ausstellungshalle der Bundesrepublik Deutschland ドイツ連邦共和国美術展示館(略してBundeskunsthalleという美術館を訪れた。

Japans Liebe zum Impressionismus - Von Monet bis Renoir 日本が愛した印象派 - モネからルノワールへ” というタイトルの展覧会。 東北から九州まで日本全国主要美術館から集められた、100点以上もの日本国内の重要な印象派コレクションを、ヨーロッパにおいて初めて展示するというもの。同時に当時影響を受けた日本人作家作品、そして逆にジャポニズムとしてフランスの印象派に影響を与えた日本の浮世絵版画などのヨーロッパコレクションも展示されていて、大変見応えのある展覧会だった。

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(日本語表記の案内やパンフレットなどもよく用意されていた)


印象派やフランス近代絵画へ対する日本人の偏愛は、日本を離れているとより強く感じる。
私は年に一度は帰国するようにしているけれど、いつ帰っても必ずどこかの大きな美術館で印象派展覧会が開催されている。モネ、ルノワール、ゴッホ、ピカソなどの名前は日本人なら小学生でも知っていると思う。逆に北斎、広重、栖鳳、大観などの名前は知られているか分からない。私は日本画専攻として東京の美大に入学した時、日本人なのに日本画を全然知らなかった自分と直面し、どうしてなのか不思議に思った。それは日本の社会風潮や美術教育が原因であると思うけれど、そうなるに至った歴史的社会的背景があったことを、この展覧会で改めて知ることが出来た。

長く鎖国していた日本が開国し、19世紀末からヨーロッパ絵画が日本人の目にも触れることになった。当時は印象派全盛期。従来の日本芸術とは全く様式の異なる美術が、いかに当時の日本人に斬新で魅惑的に映ったか、同時に日本から渡った浮世絵作品もヨーロッパ人達に衝撃を与え、それぞれの芸術はお互いに刺激し合い、その後の美術運動へ多大な影響を残す。
展覧会の中心は、マネ、モネ、ゴーギャン、ピサロ、セザンヌ、シニャック、ロダンなどの作品郡。また所々に同時期の日本人作家作品、そして印象派絵画の日本人コレクター、林忠正、松方幸次郎、大原孫三郎についても特別コーナーが設けられていて、国立西洋美術館大原美術館なども同時に紹介されていた。 

大変ユニークな企画展で終了間近なこともあり、かなりの人の入りで、10代の高校生から高齢者まで、団体の鑑賞者が何組もいた。そして皆ガイドが付いていて熱心に説明している。どんな説明をしているのか興味があり耳を傾けてみると、開国当時の日本の状況、着物の着方や決まりごと(振袖を着るのは未婚女性だけなど)、国立西洋美術館のある上野公園の様子、などなどかなり詳細に至って話をしていて、もちろん既に知っていることだけれど、外国人視点からの客観的な説明は改めてこちらも勉強になった。

この展覧会は1年前にEssen エッセンのFolkwang Museumで観たジャポニズムの展覧会にも通じるものがあったドイツ人達は極東の島国からの里帰り作品群を特別な想いで観ていただろうし、私も日本近代美術史を改めて学ぶと同時に、当時の日本人達の欧州への憧憬や新時代への努力を、西側の視点から想像できた気がする。黒田清輝、児島虎次郎、安井曾太郎などの作品をドイツの美術館で観られるとは思ってもみなかったし、昔美術の教科書で観た記憶を思い出させてもらえてようで、なんだか嬉しかった。この展覧会は今週末21日(日)まで。

ここの美術館のカフェは、毎回その時の企画展に合わせたインテリアに変えるのだが、今回は精一杯和風にしていて、沢山の折り紙が吊り下げてあったり、畳マットが敷いてあったりして、日本人からすると少しズレた所もあったけれど、そこがまたとてもかわいらしく好感を持った。

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帰りの電車まで時間があったので、せっかく来たので少し町を散策。ドイツが東西分離されていた第2次大戦後から1999年まで、旧西ドイツ首都だったボン。実際に訪れてみると、そんな過去があったことが想像しにくいほどこぢんまりと落ち着いた大学町。ボン大学はレベルが高く有名で、美術館内のレストランにも、ボン大学で栽培されたジャガイモや洋梨のメニューなどもあり、町と大学の関係を感じる。旧市街は小さいけれど主要なお店はすべて揃っていて住みやすそうな印象。
ここはBeethoven-Haus ベートーベン生家(現在は彼の生涯を紹介する博物館)があることでも有名なのだが、旧市街の中に他の建物と全く変わりなく普通にあり、気付かずに通り過ぎてしまいそうなほどで、そのさりげなさがとてもヨーロッパらしいと思った。

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町の中心の広場にあるベートーベン像

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ダークピンクの壁がすてきなベートーベン生家

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# by mikimics | 2016-02-20 10:19 | museum | Comments(0)

絵馬つくり Drawing Ema 2016

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デュッセルドルフに住むようになってから、ずっと自宅で絵画教室をしています。毎週2日は子供クラス、隔週土曜日に成人クラスを開催していて、毎月約20名の生徒さん達と和気あいあいとにぎやかに過ごしています。季節感を意識した絵画・造形の課題を組んでおり、毎回すばらしい作品が生まれるので、時々こちらでも紹介しようと思います。
I introduce the works of my kids art class. January's theme was Drawing Ema. Ema are small wooden plaques which are hung up at the shrine. With drawing animals from chinese horoscope and own wishes of new year. 2016 is the year of Monkey.


子供クラス1月の課題 「絵馬つくり」
毎年年始めの課題にしています。我が家に来ている子供達は大抵ドイツ生まれなので、ドイツ人の子供達はもちろん、日本人の子達でも「絵馬」というものを知りません。干支も分からない子もいます。神社やお寺に絵馬が掛かっている写真を見せたり、どういうものかを説明して、片面に干支の動物を描き、もう片面に今年の目標や希望を書いてもらいます。今年は申年、普段猿を描くということは皆滅多にないので(特に4~5歳児はほぼ全員初めて)、最初は戸惑っていましたが、皆良い作品ができました。

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小学生の作品。富士山や初日の出も添えて、それらしい雰囲気。

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幼稚園生達のポップな作品。既成概念が全くない表現が魅力的。

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娘の今年の希望。典型的な4歳女子…


普段描かない「木」という素材、きれいな色の紐で気軽に掛けられること、シンプルで美しい形、が子供達の気に入るようで、皆赤い紐をつまんで持って、喜んで持ち帰りました。日本文化を紹介するという意味でも、今後も毎年続けて行きたいと思っています。

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# by mikimics | 2016-01-31 22:34 | art class | Comments(0)

2つの新春展のお知らせ・2016

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新年明けましておめでとうございます。
年明け早々横浜の2つの画廊にて新春展に参加いたしますので、ご案内させていただきます。今年は作品のみの参加で、私は会場にうかがえないのですが、お時間がございましたらどうぞご高覧下さい。


新春まんぷく!お年賀展 vol.3
横浜市神奈川区鶴屋町3-33-2 横浜鶴屋町ビル1F TEL045-411-5031
2016年1月9日(土)-24日(日) 11:00-18:00 最終日16:00まで (18日(月)休廊)
レセプションパーティー:1月10日(日) 17:00-19:00

日本画、版画の作家を中心とした27名の参加者による大変見応えのあるグループ展です。このたび私は初めてお世話になる画廊で、5点出品いたします。

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出品作 „A landscape ある風景” ( á 40x25cm, Pigment on Japanese paper 2015)



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百葉展 -日本画家交流展-
ギャラリーミロ
横浜市中区吉田町4-1 TEL045-263-0201
(JR・地下鉄関内駅徒歩3分、JR桜木町駅徒歩7分)
1月25日(月)-31日(日) 11:00-18:00 最終日16:00まで

ほぼ毎年参加させていただいている、7名の日本画家によるグループ展で、私は4点出品いたします。


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出品作 „Jacaranda in Marrakesh マラケシュのジャカランダの木” (18x14cm, Pigment on Japanese paper 2015)



本年も皆様のご健康ご多幸を心よりお祈りいたします。
2016年もどうぞよろしくお願いいたします。

寺尾美紀

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# by mikimics | 2016-01-08 23:00 | information | Comments(0)

2Euroで得たもの

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我が家のそばは便利な商店街があって、いくつかのスーパーマーケット、パン屋、肉屋、八百屋、花屋、ケーキ屋などなどの専門店もたくさんある。時間がない時は急いでスーパーで買い物するけれど、専門店の方が新鮮なものが買えたり、対面販売で会話が生じて楽しいしドイツ語の勉強にもなるので、なるべく私は個人のお店に行くようにしている。
その私の行きつけのお店に、あるチョコレート屋がある。ちょっとした手土産に適したものが売っているので、月に何回かは行っている。初老の上品なマダムがいつも店頭にいて、娘を連れて行くと必ず何かしらのプラリネを一つ彼女にくれるような優しいお店。

先日お友達の家に遊びに行くのに、またそのお店で買い物をした。店内に釣銭用のお金を多く置かない主義らしく、大きな紙幣を出すとあまり良い顔をされないことは以前から知っていたけれど、その日は運悪く小さな紙幣の持ち合わせがなかったので、6Euroほどの商品に対して50Euro紙幣を出した。
すると案の定、「もっと小さなお金はありませんか?」と言われた。
「ごめんなさい。生憎この紙幣と、あと小銭はこれだけしかないのです。」と言って、私はお財布から硬貨を全部出して見せた。
マダムは私の手のひらのコインの中から4Euroほどを選んで取り、「おつりが出せないことはないのだけれど、今ここで小さな紙幣を使ってしまうと後で困るから、明日か明後日にでもまた2Euroができたら持ってきて下さい。」と言われた。
「でもそれでいいのですか?」と私が聞くと、
「Wir kennen uns schon. (私達、もうよく知り合ってるじゃないですか。)」と言われた。

この言葉を聞いた時、私は思わず胸がドキッとした。そんな風に信用してもらって嬉しいというより、大げさな言い方かもしれないけれど、お客との信頼関係を大切にする - 商売の基本 - を示された気がした。
その後この2Euroがずっと頭から離れず、たった2Euroのことなのだけれど、なんだかそれはとても重要なことに思えてきて、これはぜひ今日中に返したいと思い、意識して小銭を作って帰り道にまたお店に寄り、お金を渡した。「ご親切にどうもありがとう。」とマダムにすてきな笑顔で言われて嬉しかった。

それ以来、私はこのお店の前を通るたびに、あの2Euroのことを思い出す。そしてもともと気に入っていたこのチョコレート屋さんは私にとってさらに特別なお店になった。これがお客の心をつかむということなのだろうなと思う。私が子供の頃と比べると、最近はお店の人とのこういう気持ちの入ったやりとりは少なくなった気がする。大型チェーン店が世界のどの都市に行っても同じように並ぶ昨今、こういった個人のお店との関係は大切に保ち続けたいと思う。


デュッセルドルフ在住の方、このすてきなショコラテリーはこちらです。最初は一見さんお断り的な雰囲気があるので、少し入りにくいかも知れませんが、Altbier アルトビール入りやSenf ゼンフ(マスタード)入りプラリネなど、美味でちょっと変わったオリジナル商品が置いてあるかわいらしいお店です。

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# by mikimics | 2015-12-02 18:11 | life | Comments(0)

„Puppenbühne Bauchkribbeln” Theater Museum, Düsseldorf

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デュッセルドルフ町中にHofgarten ホーフガルテンという市民の憩いの場となっている大きな公園があり、その中に薄いピンクのクラシックな建物 Theater Museum 演劇博物館がある。ここは演劇関係品のコレクションを展示している博物館なのだが、時々舞台や人形劇なども上演される。
ここで月に1,2回開催される„Puppenbühne Bauchkribbeln” という人形劇を家族で鑑賞した。Bauchkribbelnとは、どきどきわくわくすることや緊張から、お腹がむずむずするという表現で、「おなかむずむずわくわく人形劇場」みたいな意味。Martina Burkandt氏という人形師の女性が、2003年からたったひとりですべてやっている。

毎月季節の行事などを題材にしたオリジナル劇を上演していて、今回の演目は"St. Martinus oder ich gehe mit meiner Laterne" 「聖人マルティヌス (=St. Martin)」の生涯の話。
ドイツで毎年11月11日頃に、St. Martin(ドイツ語発音はザンクト・マーティン)という聖人を祝う子供向けのカトリック伝統行事がある。毎年幼稚園や小学校で子供達は自分でランタンを作り、暗くなってからそれを明るく灯し、歌を歌いながら行列になって持ち歩くというもの。(実際にどのようなお祭りなのかは、友人が書いた記事がとても分かりやすいので、こちらをご覧下さい。)
聖マーティンは昔、凍え死にしそうな物乞いに自分の赤いマントを剣で切って半分分け与えたという慈悲深い人。洗礼を受けた後はさらに多くの人を助け、病の人を治すなどの奇跡も起こし、死後も人々に尊ばれ愛され、キリスト教の聖人になったという話。

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前回のブログに書いたマリオネット劇場は、より芸術性が高くどちらかというと成人向け劇なのに対し、今回は完全に子供向けの内容で、時々観客ともやりとりしながら劇が進められていく。人形達も糸で操られるのではなく、じかに手を入れて動かす仕組みで、表情も動きもとてもかわいい。「Für junge Leute von 3 bis 99 - 3歳から99歳までの若い人達へ」と謳われているように、大人が観ても十分楽しめる。会場に入ると一見して手作りと分かるすてきな舞台が目に入った。

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聖マーティンの人生を分かりやすくおかしく表現しながら、他人を思いやり分かち合う精神を大切にしようという内容の舞台。1時間20分もの劇だったけれど、どの子も最後まで良く観て参加していた。10人近い登場人物を全員声色を変えて演じ、同時に舞台背景、小道具、音楽、照明も変える。すべてMartinaさんの一人芝居。人形も衣装も舞台も全部彼女の手作り。ただただすごい仕事ぶり。
劇が終わるとMartinaさんは聖マーティン人形と共に出てきて、子供達全員に話しかけ、クッキーをふるまってくれた。「年に一度僕のこと思い出してくれてありがとう。思い出してくれる人達がいるから僕はずっと皆の心の中に生き続けられる。このクッキー、誰かと分けて食べてね。」という聖マーティンの言葉を聞きながら、子供達は一枚ずつクッキーを受け取った。
そして言われた通り自分でクッキーを割って、親や兄弟に配る子供達の様子を見ていたら、なんだか涙が出て来てしまった。本当に良いものを子供に提供したいという彼女の熱い思い、強い信念、隅々まで手を抜かない徹底した姿勢には、感動するだけでなく頭が下がる思いだった。

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気が付くとこれまで8回も経験して来たドイツの年間行事、大体こんなものと知っているつもりでいるけれど、時々まだまだ表面的な知識だと思い知らされる。Martinaさんは様々な場所で上演しているが、また来月も家から近いこの演劇博物館でクリスマスの劇があるので、彼女の愛情深い仕事を観て、私も色々と学ばせていただこうと思う。



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# by mikimics | 2015-11-10 18:43 | theater | Comments(0)