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秋のモチーフ Autumn motives

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11月も半ば、ますます秋が深まり、冬のように寒い日も増えてきました。
我が家のアトリエでも、落ち葉のスケッチやコラージュをしたり、秋の野菜や果物を観察したり、秋らしいモチーフで制作をしています。
また9月から、ご縁があって娘が入学した小学校の学童のアートクラスでも週1回授業をさせてもらっています。新しい経験を通じて、こちらも日々子供達と楽しみながら色々と学ばせてもらっています。
It's feeling like autumn more and more in the middle of November... sometimes it is cold almost like winter.
In my atelier we're working with autumn motives, for example, drawing and collage of fallen leaves, or painting autumn's seasonal vegetables & fruits...
Since September I'm teaching once a week at an art class of after school care program (OGS) in my daughter's elementary school. I'm enjoying working with children and learning for myself through this new experience.


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@school 割り箸の先を削ったペンに墨汁をつけて、まず輪郭線を描いた後に水彩絵具で着彩。
子供達に自作の割り箸ペンを見せて「これ、元は何だったと思う?」と問いかけると、「Ah, Sushi!」という答え。笑 こちらでは「割り箸=SUSHI」とすぐに連想されるくらいお寿司は大人気で、好きな子供も多いです。

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(7 years old boy)
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(7 years old girl)
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(6 years old girl)

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スケッチした翌週は、先週のモチーフ落ち葉を使ってコラージュ。少々子供っぽい課題のため高学年の子達はやりませんでしたが、低学年の子達は楽しんでいました。

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(7 years old girl)
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(6 years old girl)


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@my home atelier 大型モチーフを中央に組んで、描きたいものを各自選んで描いてもらいました。
モチーフを見るだけでなく、触ったりにおいを嗅いだり五感を刺激しながら。終わった後はみんなでみかんやぶどうも味わいました。

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(6 years old boy)

# by mikimics | 2017-11-21 19:01 | art class

Die Lange Nacht der Münchner Museen 2017, München

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10月半ばの土曜日、あるアートイベントを観に久しぶりのミュンヘンへ。年に一度開催される今年で19回目の„Die Lange Nacht der Münchner Museen 2017 (ミュンヘンの美術館の長い夜)”。
市内にある美術館やギャラリー、博物館、教会など約90の団体が19時から夜中2時までオープンし、15Euroの共通チケットで全て自由に鑑賞できるというもの。10分おきに来る5種類の無料シャトルバスも運行し、お天気に恵まれたこともあり、今年は2万人以上もの入場者数があったそう。

この夜のイベントはドイツの各都市でもあり、デュッセルドルフも同じく17回続く„Düsseldorfer nacht der museenが毎年春に開催されるが、美術館もそれに向けて普段とは違ったプログラムを開催したり、州会議場など普通は一般公開されていない建物にも入れるので、いつもはあまり美術館に出掛けない人への興味をうながす良い機会としても機能していて、毎回市民が大勢街中を歩き回る熱い夜となっている。



このイベントに、日本から展覧会開催のためいらしていた友人のアーティスト井上尚子さんも参加されていたので、彼女の個展を観にまずはMuseum Villa Stuck ヴィラ・シュトゥック美術館へ。ここは象徴主義の芸術家Franz von Stuck フランツ・フォン・シュトゥックの邸宅だった建物を現在は美術館としているもので、すばらしいアールヌーボー調の建築の中に彼の作品が展示され、同時に現代作家の企画展も開催されている。

尚子さんは「香り」をテーマに活躍される作家で、今回は„Hisako Inoue. Die Bibliothek der Gerüche (井上尚子展、香りの図書館)”と題された来年1月まで続く展覧会を開催中。彼女が各地で集めた異なるにおいの古書や、分析を元に作られた香りを鑑賞者も嗅ぎ、においから呼び覚まされる記憶や感情を体験するというもの。

ドイツ人ガイドによるガイドツアーでは、日本に古来からある香りの芸術「香道」を、ヨーロッパのワインテイスティング文化に例えて紹介されていて、ガラス製ケーキカバーに一点ずつ飾られた古書の展示も美しく、アンティークで上品な内装ととても合っていて、目を閉じてゆっくりと本の香りを愉しみ想いを馳せる行為は大変ユニークな時間だった。

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会場では鑑賞者が一人一人本を手にとって香りを体験するので、隣の人に「どうぞ」と本を渡したり、「このにおい私は好き」「私も!」などと自然と声を掛け合う瞬間が生まれる。「嗅覚」という普遍的な人間の感覚で、国籍も年齢も宗教も飛び越えて気軽に会話ができる。「香り」という抽象的なテーマを、このように誰でも参加できる印象的な展覧会の形にした井上尚子さんの力量に感動した。

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„Shelves in an old house” „Incense burning in the temple”
といったそれぞれの香りにつけられたタイトルにも井上尚子氏のセンスを感じる。

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本の香りを科学的に分析し元素分けにしたグラフも面白かった。

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すみずみまで趣向を凝らした内装の建築。

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Museum Villa Stuckを後にし、
その後さらにシャトルバスで移動して別の会場へ。バス内は毎回ほぼ満員、皆美術館を回るという同じ目的の人達だから、たまたま隣に座った人とも、何の展示を観てどこが良かったかなどと話すこともあり退屈しなかった。

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St.Lukas 聖ルーカス教会 Installation by Wang Te-Yu & Lin Wei-Lung (Taiwan)




最後に回ったHaus der Kunst ハウス・デア・クンスト(芸術の家)美術館はとても良かった。ナチス時代の建物なので、権威を象徴するかのように天井がとても高く、どっしりと重厚で特別感のある建築。世界的に有名なドイツの写真芸術家Thomas Struth トーマス・シュトルートの個展も見応えがあったが、 個人的にはイギリスの画家Frank Bowling フランク・ボウリングの回顧展がすばらしいと思った。

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数年前に改装されたアンティークな内装のバーGoldene Barもかなりクール。




翌日、デュッセルドルフに帰宅する前に Lenbachhaus レンバッハハウス美術館へ。ここも肖像画家Franz von Lenbach フランツ・フォン・レンバッハ侯爵の個人邸宅が美術館になったもので、全体の雰囲気や庭園がすばらしく、ドイツに住む前旅行で初めてここに来た時の感動は忘れられない。2013年春に4年間の改装工事の後に再オープンしてから、ようやく今回初めて訪問できた。もともとこの美術館の目玉の、表現主義のグループ「青騎士」コレクションのカンディンスキー、マッケ、マルク、ミュンターなどの作品部屋に加え、戦後~21世紀の現代美術のコレクションのセクションがかなり増築されていて、とても見応えがあった。

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広い吹き抜けのロビーでは、デンマーク人アーティスト、オラファー・エリアソンの天井から続く美しいガラスの立体作品が出迎えてくれる。 Olafur Eliasson „Wirbelwerk” 2012

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„Der Blaue Reiter” 「青騎士」コレクション

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Sarah Morris セーラ・モリス (アメリカ)の部屋

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Katharina Grosse カタリーナ・グローセ (ドイツ)の部屋

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やはり別格の扱い、Joseph Beuys ヨーゼフ・ボイス コレクション

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Franz von Lenbach レンバッハ コレクション

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庭園も秋の雰囲気で、またすてきだった。



Museum Villa StuckにしてもLenbachhausにしても、こういう元は芸術家個人邸宅で歴史的建造物でもある美術館というのが、デュッセルドルフにはあまりないので、深い歴史と文化の香りを感じるミュンヘンは、たまに訪れると同じドイツの都市でも新鮮で良い刺激を受けることが出来る。秋晴れの気持ちの良い週末で、また一つミュンヘンでの良い思い出ができた。

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# by mikimics | 2017-10-30 22:11 | museum

縦割り保育

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「ドイツの幼稚園の先生達はよく座っている」
これが私が娘の幼稚園で感じた第一印象だった。幼稚園の先生といったら、一日子供達のお世話続きで、座る暇もないくらい動き回っているものだと思うが、日本の先生達と比べると随分違う。
もちろん子供達の観察はしていて、危険なことやもめごとなど何かあった場合はすぐに動くけれど、何もない時はよくどっかりと座っていて、子供達と接しながら優雅にお茶を飲んでいることもある。
国民性や働き方の違いもあるだろうけれど、日本の幼稚園しか知らなかった私にとっては結構驚きだった。

でもしばらくしてこれはもしかしたら、「縦割り保育」と関係する所も大きいのではないかと思うようになった。
ドイツの幼稚園は基本縦割りで、同じクラスに3歳から6歳の子供達が混在している。この頃の月齢の差は大きく、3歳と6歳では身体的にも精神的にもできることが随分違う。先生が直接手を貸さなくても、年上の子達が自然に年下の子達を助け、同時に年下の子達も年上の子達から多くを学ぶというナチュラルなサイクルが生まれる。そして先生もあまり身体を動かさずに言葉でそう促すこともできる。年齢別に分けた横割り保育で、3~4歳児だけの年少組と5~6歳児の年長組では先生方の動き方や身体的疲労度もかなり違うと思う。

私も自宅で絵画教室をしている時、毎回5~6名の子供達を相手にしているのだが、例えば参加者全員4歳児の場合と、その中にひとり5歳以上の子がいるのとでは、こちらの接し方も少し変わる。4歳はまだ横について手取り足取り教えてあげなければいけない所があるが、5歳になると、もちろん個人差はあるけれど、言葉で伝えれば大抵理解して自立してやってくれるので結構助かる。
妊婦時代に教室をしていた時も、以前は自分が一人一人子供のそばに行っていたのを、あまり動けなくなり必要に迫られて意識的に身体は動かさずに言葉で説明する方法(自分は動かず子供に動いてもらう)に変えてみた。すると予想以上にそれが上手く行ったので、やり方次第で仕事の疲労度も変わるものだな、と思ったりもした。


3歳4ヶ月で入園した娘は、入園した当初はずっと「はやくおおきくなりたい、はやく4さいになりたい」言っていた。幼稚園に行くようになって、ほとんど自分より年上の園児達の姿を見て、いかに自分が何も出来ず無力なのかを知ったらしい。いきなり劣等感から始まる園生活もどうなのか、と少し心配したけれど、数ヶ月もするとだんだん言わなくなり、自分に合う相手を自然に見つけ対等に楽しむようになった。

年中になって、一番仲良しのお友達が1歳半年上の6歳の女の子になった。彼女の言動はすべて娘の憧れで、その子と仲良くなってから、娘の会話力もぐっと伸びた気がする。同時に言葉遣いやしぐさもその子そっくりになった。子供って少し年上の子供から、手っ取り早く色々なことを吸収するのだなとつくづく思った。

年長になり、年少→年中の進級時より、年中→年長になった時の方が、娘は園内での自分のポジション探しに戸惑っていたように見えた。今までの憧れのお兄さんお姉さんが急にいなくなって、今度は自分がその立場に置かれて、何を目標にしたらいいのか分からないようだった。それについて先生と話した時、「今後の社会ではそういう場面は何度も現れるので、この経験を積むことは大切なことです。」と言われた。
娘のクラスは年長の女子が少なかったのもあり、1つ年下の女の子2人が彼女の大事な友達になり、随分とお姉さんらしい振る舞いをするようになった。一人っ子の彼女は、幼稚園の縦割り教育の中で、妹役になり、姉役にもなり、兄弟姉妹の関係を学ぶ擬似体験をさせてもらえたと思う。


縦割り保育、横割り保育、それぞれに長所短所あると思うし、私には専門的なことは分からないけれど、自分が経験しなかった「縦割り保育」を娘を通じて体験し、良い意味で色々と考えさせられる機会を得られた。

縦割り教育は、集団の多様性を学び受け入れ、その中で自己を発見し形成するトレーニングになるように私には見えた。

個人主義の国ドイツでは、自然な教育方法かも知れない。でも子供の年齢別能力が違うことで集団行動がしにくくなるため、グループ活動が多い日本では広く定着しにくいシステムなのかも知れない。

ドイツは幼稚園は縦割りだが、小学校からは年齢別のクラス分けになる。でもこちらでも例外的にモンテッソーリの小学校は1年生~4年生(ドイツの小学校は4年生制)まで、同じ教室で学ぶ縦割り教育をしている。同じ室内で学習しながら自主性を重んじたカリキュラムが組まれていて、あえてそうされているからには、きっと利点も沢山あるのだと思う。


冒頭の絵は、娘が5歳の時に夏休み明けに久しぶりに会った幼稚園の友達を描いたもの。明らかに年少の子も一緒に自然に描いているのが面白いなと思った。

# by mikimics | 2017-08-09 17:58 | life with kids

日本の幼稚園体験 3

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今月半ばに娘は無事に幼稚園を卒園した。
そのひと月半ほど前に一時帰国した際、また今年も、一昨年昨年と同様に、実家そばの幼稚園に9日間、体験入園させていただいた。
年少、年中、年長と3年間お世話になった幼稚園は本当に温かい園で、3回目にもなると「おかえりなさ~い!」と先生方もお友達も保護者の方達も、皆様優しく出迎えて下さり、本当にありがたくとても嬉しかった。

ただ今回の体験は、ほぼ「楽しかっただけ」といえる過去2回とは、少し違った意味合いのものになった。それは幼稚園側が変わった訳ではなく、娘の内面の変化によるものだった。
春頃から彼女は少し情緒不安定になっていた。今まで全く平気だったことを不安がったり、小さなことですぐ傷付いてメソメソしたり、登園や習い事を初めて強く拒否したり。。。
6歳になり、卒園プログラムで幼稚園内の雰囲気が変わったり、周囲にもう小学生だねと日々言われ続け、習い事のレベルも以前より難しくなって、卒園と入学に対するプレッシャーで、とても感じやすくなっているように見えた。家にいる時は変わらずのびのびしているのに、外の世界に対して萎縮してしまって、自分でもどうしていいか分からないようだった。
そのタイミングでの日本行きには不安もあったのだが、3週間半、日本の陽気に触れ、家族や懐かしいお友達と再会し、国内旅行もしたことで、結果的には良い気分転換になり、前より元気になってドイツに戻ることが出来た。でも日本の幼稚園でも同じように過敏な反応を示すことがあり、過去2年にはなかった彼女の様子を、先生方には温かく見守っていただいた。


改めて4歳5歳で体験した時の写真を見返してみると、何の悩みもない屈託のない笑顔をしている。6歳になって精神的に成長し、同時に不安、疑念、恐れ、といった繊細な感情も生まれ、ただ始終楽しんで過ごすだけではなくなった。ドイツの幼稚園の先生方にも相談していたが、日本の先生にも話を聞いていただいた。先生方の回答はどちらも似ていたけれど、悩みを母国語で専門家に相談できるってこんなに良いものなのだなと私自身痛感して、とてもありがたかった。分かっていたことだったのに忘れかけていて、ハッとさせられた助言も沢山いただけた。

「感じない子もいますけれど、入学前に不安定になるお子さんは結構いますよ。」
「家ではのびのびしてるって、一番大事なことだと思います。ご両親にしっかり愛されているということですし、家庭が全ての基本ですから。」
「中には外ですごく頑張っちゃって、家でずっと泣いているタイプの子もいたりするんですよ。」
「外で泣けるってある意味良いことですよ。自分の感情を外側に出すことが出来てる訳ですから。それもできないお子さんもいますからね。」
「成長の一過程、一つの壁なんでしょうね。でもこれを越えたらきっと大きな自信につながると思いますよ。」


娘は弱くなる瞬間は毎日何回かあったようだが、毎回長く続く訳ではなく、それ以外の大半の時間は、お友達と仲良く楽しく遊んでいたそうで、特に一人っ子でおとなしいタイプの彼女には、自然とお世話好きなしっかり者の女の子達が常に数人そばについて、あれこれ面倒をみてくれたようだった。ただ年長になると、どうしても同性同士のグループで遊ぶようになるらしく、過去2回は男の子の名前も娘の口からよく聞いたのに、今回はほとんど聞けず、それは少し寂しく感じた。

そしてやはり日本語の成長も著しく見られた。幼稚園はもちろん、祖父母とのやりとり、周囲の人達の会話、テレビから聞こえてくる声、すべてを貪欲に吸収して、滞在3週目は目に見えておしゃべりになった。
また通園時に今までになかった質問をされて、感心したこともたびたびあった。里帰りは年に1度だけで、1年前を思い出して比べることが出来る分、彼女の変化がよく分かる気がした。

「どうして日本の信号には黄色がないの?」(デュッセルドルフは歩行者信号も赤黄青の3色表示(他のドイツの町は赤青の2色)、日本は黄がない代わりに青が点滅する)
「どうしてこんなに日本の歩道はせまいの?」(道路全般、ドイツの方が幅が広い)
「どうして日本の車は運転する所が違うの?」(ドイツは左ハンドル、日本は右ハンドル) などなど…



日本の幼稚園体験 - 3年間で合計30日のことだったけれど、それは確実に娘の幼稚園生活を豊かにしたし、様々なことを比較できて私も学ぶことが多かった。そして子供の内面変化を観察して改めて「3年」という月日の長さを感じた。
もし今年体験できていなかったら、表面的に「楽しい思い出」だけで終わってしまった気がするし、あれこれ悩んだ分、重みが増した最後の年で、色んな意味で彼女の「成長」を感じた3回目の体験だった。


また今回の滞在がきっかけで好きになったものに、フラフープとアクアビーズが挙げられる。
日本の幼稚園の共同おもちゃにフラフープがあり、お友達に誘われて娘は初めてやってみてとても気に入ったので(冒頭の絵はそのことを描いたもの)、こちらに戻ってから買ってあげて、毎日練習しているうちに随分上手になった。誘ってくれたあの子、元気にしてるかしらね?と話したりする。
また、アイロンビーズと違って全て自力で完成できるアクアビーズが娘は好きで、ドイツで普通に買ってやっていたのだが、日本ではもっと安価で種類も多いのを見て驚き、調べてみたら元は日本製のおもちゃだったことを今回初めて知った。(日本の皆さん、アクアビーズはヨーロッパでも人気です!)
幼稚園で仲良くなった子達から、お別れにお手紙や自作のアクアビーズを沢山いただいて、嬉しくかわいく思った。そんな小さな思い出の品々が、ドイツの私達の生活に散りばめられて、いつでも自然に日本に思いを馳せることができる。
来年は小学生だから、夏休みに日本に来られたらまたぜひ遊びましょうよ、と沢山のお友達に声を掛けていただいたので、ご縁を長く続けられるように大切にして行きたいと思う。

# by mikimics | 2017-07-24 17:30 | life with kids

„篠田桃紅 昔日の彼方に” 菊池寛実記念 智美術館, Tokyo

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随分前のことになってしまったが、先日日本滞在した際に、今回初めて訪れた東京の智美術館 Musee Tomoでの展示について。

現代陶芸のコレクター菊池智氏のコレクションを公開している、2003年東京・虎ノ門に開館した美術館。
初夏のようにさわやかな5月末の日、普段滅多に降りない溜池山王駅から徒歩で向う道は思いのほか緑が多く、お散歩気分で退屈せずに美術館に到着した。

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篠田桃紅 昔日の彼方に
和紙に墨という日本的画材を用いながら世界的に活躍される篠田桃紅氏 Toko Shinoda (1913-)の作品は各所で見かけていたけれど、個展という形でじっくり観たことはなかったし、今年104歳を迎えられた氏の2016、2017年の最新作も展示されるということで、興味を持って出掛けた。

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初期の頃の書の作品から、抽象化していった代表的な仕事、最新作まで計46点。
ほとんどは和紙に墨で描かれた作品、リトグラフに手彩色も少々。線と面のシンプルな構成に、「夢」「夜明け」「みなぎる朱」「雪月花」「響」など、いつも短いひと言のタイトルがつけられていて、無駄をそぎ落とした表現から凛とした強さが伝わってくる。
伸びやかな筆や刷毛の仕事は、時に優しく、激しく、潔くて、語りかけるような繊細な書から、大胆でダイナミックな大作まで。使われている色は墨、朱、胡粉、金、銀のみといった限られたものなのに、とても表現の幅が広くて、毎回その作品の世界に引き込まれた。

そして普段は陶芸の立体作品を展示している美術館なので、普通の平面展示とは違ったプレゼンテーション方法がとても印象的だった。白い壁は一切なく、深緑、濃紺、深紅といった濃色の背景に、篠田氏の白と黒の作品は却ってとても際立って見えた。壁掛けだけでなく、展示台の上に斜めに置かれた作品も多くあり、スポットライトの当て方も効果的で、透ける布オーガンジーを使っての間仕切りの方法など、舞台芸術を見ているような気持ちになった。



展覧会を観て一月以上経った今も、地階の入り口から受付を通り、地下の展示室に向かう螺旋階段を降りた時のことを思い出す。ガラス製の手すり(これも作家作品(横山尚人氏)のもの)が下に向かって展示会場に誘うように美しく曲線を描き、これからどんな世界が待っているのかと期待させられた。
個人的には美術館は自然光が感じられる建物の方が好きなのだけれど、ここの地下の会場は内装もとても凝っており隅々までこだわりが感じられて、とても記憶に残るものだった。素敵な美術館を新しく知ることが出来たのは、今回の日本滞在の収穫の一つとなった。

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美術館エントランス扉 内側から


実家にたまたま篠田氏の著書「一〇三歳になってわかったこと」(すごいタイトル!)があったので、ドイツに持って来て、今読んでいる。103歳の方の人生哲学を聞くことも滅多にないことで、人生を俯瞰した視点、達観された意見を淡々と述べられている文章は分かりやすく、きっと今後も何度も読み返すことになると思う。
中でもこのくだりには救われる気持ちになった。


„私の日々も、無駄の中にうずもれているようなものです。毎日、毎日、紙を無駄にして描いています。時間も無駄にしています。しかし、それは無駄だったのではないかもしれません。最初から完成形の絵なんて描けませんから、どの時間が無駄で、どの時間が無駄ではなかったのか、分けることはできません。なにも意識せず無為にしていた時間が、生きているのかも知れません。
つまらないものを買ってしまった。ああ無駄遣いをしてしまった。
そういうときは、私は後悔しないようにしています。無駄はよくなる必然だと思っています。”


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美術館入り口正面にある常設展示 篠田桃紅「ある女主人の肖像」(1988)


# by mikimics | 2017-07-17 08:10 | museum