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„森村泰昌:自画像の美術史―「私」と「わたし」が出会うとき” 国立国際美術館, Osaka

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年に一度の里帰りで先月末から日本に来ているが、最初に西日本を1週間ほど旅行することにして、まず新幹線で大阪に入った。そしてタイミング良く開催中の国立国際美術館 The National Museum of Art, Osaka の„森村泰昌:自画像の美術史 ―「私」と「わたし」が出会うとき”を観ることができた。
森村氏を私が初めて意識したのは約20年前、母校女子美術大学の学園祭にゲストとして招かれた講演会を拝見した時だった。当時は失礼ながら「コスプレのアーティスト」のような先入観しかなかったのだが、とてもお話が上手な方で、その時公開されたビデオが大変面白かったのを記憶している。


ー「自画像」をテーマに自分自身を撮る。それは、大きな美術の歴史に、ひとりの美術家のささやかな人生を立ち向かわせること、楽しくもあり恐ろしくもある。その30年間の成果を一挙公開いたします。(森村) ー
いつも思うが、森村氏の言葉はとてもシンプルで分かりやすい。誰にでも理解してもらえるようにという気遣いが感じられる。地元大阪では初めての大規模個展は11の部屋からなる第1部と70分の長編映画の第2部との構成で、新作30点を含む計130点展示という大変見応えのあるものだった。
「『森村泰昌展』は撮影OK!! SNSで展覧会の様子をシェアしませんか?」というポスターが貼ってあったので、ここでいくつかの画像と共に少し紹介させていただきたいと思う。

最初の部屋は「美術史を知らなかったころの『わたし』がいる」というテーマで、美術家になる前の子供時代からの写真が数点飾ってあった。素の表情は笑顔が素敵で、仮装や化粧をしなくても普段から絵になる外見の方なのだなと思った。

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そしておなじみの西洋美術史教科書に出て来るようなポートレートがずらっと並ぶ。ダ・ヴィンチ、デューラー、カラヴァッジョ、ゴッホ、ダリなどなど。そしてレンブラントの赤い部屋、ゴヤの緑の部屋と続く。空間ごとに壁の色を変えた展示方法は成功していて、次の部屋への期待が膨らんだ。

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そして特に印象的だったのはフリーダ・カーロの黄色い部屋。極彩色の花輪の中の自画像について、昔の日本ではお店が開店する時やまた葬式でも花輪が飾られる風習があり、何かが生まれる時と死ぬ時の両方に使われたことを思い、生死に終生向かい合ったフリーダ・カーロを花輪で飾りたいと思った、という氏の説明があり、ぐっと胸に響いた。花輪のデザインも様々で、自画像との組み合わせに考慮されただろう時間を想った。それにしても本当に女装姿が美しい人だと思う。

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新作の日本近代美術作家の自画像(松本竣介、青木繁、萬鉄五郎、村山槐多など)の部屋も新しい印象を受け、今回特別な想いを持って制作されたのではという気がした。そして20世紀の日本、世界の美術へと続く。山口小夜子に扮した姿もやっぱり超美しかった。

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ロシアのエルミタージュ美術館が、第二次大戦時に爆撃の被害を恐れ、百数十万点の美術品を山奥に疎開させ、美術館には空の額縁だけが残されたという史実を基に制作された「『私』の消滅」というタイトルの部屋も特異で印象に残った。壁掛けではなくイーゼルでの展示がさらに不思議な特別感を演出していた。

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今回時間がなくて、残念ながら第2部の映像作品を観ることができなかったが、第1部も年代的にストーリーを組み立てられていて、中世から現代までの美術史を改めて勉強させてもらったような満足感があった。この展覧会でどれだけの若い人達に過去の名画や大作家達を紹介したか、その影響力を思った。ひとりで何人もの人に扮し、これだけ全てをさらけ出しても、まだまだ新しい可能性を探り続ける森村氏の姿勢に心打たれる。新しい部屋に入るたびにまたやられたという印象を受けるユニークで精巧な表現、完璧な虚構の世界に誘う独特なエンターテイメント性はさすが。2か月続いた展覧会は今日が最終日。

今回一泊だけの大阪滞在だったが、大阪駅周辺の延々と続く地下街や古い商店街がとても面白く、改めて商業都市だなと思った。また中国人や韓国人の観光客がとても多くて驚いた。東京と比べると雑多だけれど買い物しやすく活気がある風情が、特にアジアからの外国人にウケるのではと大阪在住の友人も言っていた。街を歩くたびにエンドレスに続く様々なお店の風景と森村氏の多彩な作風はどこか重なる気がして、短い時間だったけれど大阪という町が持つカラフルなエネルギーを沢山浴びることができたように思う。

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国立国際美術館のエントランスの様子



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by mikimics | 2016-06-19 09:57 | museum | Comments(0)