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„Japans Liebe zum Impressionismus” Bundeskunsthalle, Bonn

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先週、日本に関係した珍しい展覧会を観に、電車で1時間ほど少し遠出してBonn ボンへ。
町の中心部にMuseumsmeile(博物館通り)と言われる一角があり、良い博物館美術館がいくつも並んでいる。その中の一つ、Kunst- und Ausstellungshalle der Bundesrepublik Deutschland ドイツ連邦共和国美術展示館(略してBundeskunsthalleという美術館を訪れた。

Japans Liebe zum Impressionismus - Von Monet bis Renoir 日本が愛した印象派 - モネからルノワールへ” というタイトルの展覧会。 東北から九州まで日本全国主要美術館から集められた、100点以上もの日本国内の重要な印象派コレクションを、ヨーロッパにおいて初めて展示するというもの。同時に当時影響を受けた日本人作家作品、そして逆にジャポニズムとしてフランスの印象派に影響を与えた日本の浮世絵版画などのヨーロッパコレクションも展示されていて、大変見応えのある展覧会だった。

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(日本語表記の案内やパンフレットなどもよく用意されていた)


印象派やフランス近代絵画へ対する日本人の偏愛は、日本を離れているとより強く感じる。
私は年に一度は帰国するようにしているけれど、いつ帰っても必ずどこかの大きな美術館で印象派展覧会が開催されている。モネ、ルノワール、ゴッホ、ピカソなどの名前は日本人なら小学生でも知っていると思う。逆に北斎、広重、栖鳳、大観などの名前は知られているか分からない。私は日本画専攻として東京の美大に入学した時、日本人なのに日本画を全然知らなかった自分と直面し、どうしてなのか不思議に思った。それは日本の社会風潮や美術教育が原因であると思うけれど、そうなるに至った歴史的社会的背景があったことを、この展覧会で改めて知ることが出来た。

長く鎖国していた日本が開国し、19世紀末からヨーロッパ絵画が日本人の目にも触れることになった。当時は印象派全盛期。従来の日本芸術とは全く様式の異なる美術が、いかに当時の日本人に斬新で魅惑的に映ったか、同時に日本から渡った浮世絵作品もヨーロッパ人達に衝撃を与え、それぞれの芸術はお互いに刺激し合い、その後の美術運動へ多大な影響を残す。
展覧会の中心は、マネ、モネ、ゴーギャン、ピサロ、セザンヌ、シニャック、ロダンなどの作品郡。また所々に同時期の日本人作家作品、そして印象派絵画の日本人コレクター、林忠正、松方幸次郎、大原孫三郎についても特別コーナーが設けられていて、国立西洋美術館大原美術館なども同時に紹介されていた。 

大変ユニークな企画展で終了間近なこともあり、かなりの人の入りで、10代の高校生から高齢者まで、団体の鑑賞者が何組もいた。そして皆ガイドが付いていて熱心に説明している。どんな説明をしているのか興味があり耳を傾けてみると、開国当時の日本の状況、着物の着方や決まりごと(振袖を着るのは未婚女性だけなど)、国立西洋美術館のある上野公園の様子、などなどかなり詳細に至って話をしていて、もちろん既に知っていることだけれど、外国人視点からの客観的な説明は改めてこちらも勉強になった。

この展覧会は1年前にEssen エッセンのFolkwang Museumで観たジャポニズムの展覧会にも通じるものがあったドイツ人達は極東の島国からの里帰り作品群を特別な想いで観ていただろうし、私も日本近代美術史を改めて学ぶと同時に、当時の日本人達の欧州への憧憬や新時代への努力を、西側の視点から想像できた気がする。黒田清輝、児島虎次郎、安井曾太郎などの作品をドイツの美術館で観られるとは思ってもみなかったし、昔美術の教科書で観た記憶を思い出させてもらえてようで、なんだか嬉しかった。この展覧会は今週末21日(日)まで。

ここの美術館のカフェは、毎回その時の企画展に合わせたインテリアに変えるのだが、今回は精一杯和風にしていて、沢山の折り紙が吊り下げてあったり、畳マットが敷いてあったりして、日本人からすると少しズレた所もあったけれど、そこがまたとてもかわいらしく好感を持った。

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帰りの電車まで時間があったので、せっかく来たので少し町を散策。ドイツが東西分離されていた第2次大戦後から1999年まで、旧西ドイツ首都だったボン。実際に訪れてみると、そんな過去があったことが想像しにくいほどこぢんまりと落ち着いた大学町。ボン大学はレベルが高く有名で、美術館内のレストランにも、ボン大学で栽培されたジャガイモや洋梨のメニューなどもあり、町と大学の関係を感じる。旧市街は小さいけれど主要なお店はすべて揃っていて住みやすそうな印象。
ここはBeethoven-Haus ベートーベン生家(現在は彼の生涯を紹介する博物館)があることでも有名なのだが、旧市街の中に他の建物と全く変わりなく普通にあり、気付かずに通り過ぎてしまいそうなほどで、そのさりげなさがとてもヨーロッパらしいと思った。

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町の中心の広場にあるベートーベン像

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ダークピンクの壁がすてきなベートーベン生家

by mikimics | 2016-02-20 10:19 | museum