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日本のトイレ

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毎回の日本滞在で感じるのは、日本は本当にトイレ先進国だということ。
そのハイテクぶり、多様な機能は来るたびに進化していて、どこに行っても同じような基本的なトイレしかないドイツから来たローテクな私達は結構驚くことが多い。
10年前、夫は東京で仕事をしていた。クールな大都会「Tokyo」に興味があって一度訪れてみたいと思うヨーロッパ人は多く、当時も彼の友達が沢山ドイツから休暇でやって来た。そして彼のマンションに泊まった人達は皆、トイレ(ごく普通のウォシュレットトイレ)の写真を撮っていった。まだドイツに住む前だった私はそんなに珍しいものかな?と不思議に思ったが、今は彼らの気持ちが分かる。そしてその外国人が驚く感覚を、私の娘もしっかり持っている。

日本にいる時、外出先でトイレに入ると、彼女はいつも興味深げにしげしげと便器を観察し「これ、どうやってながすの?」と毎回必ず私に聞いてくる。「かってにながれるのかな?どこかおすのかな?」
そして私も即答できないことが多い。本当に様々なタイプがある。自動的に流れるタイプ、ボタンを押すタイプ、手をセンサーにかざすタイプ、レバーを下におろすタイプ… 実に色々な機能やデザインがあって、感心すると共にここまで複雑にする必要はあるのかなと思ったりもする。

個室内の私達の会話は延々と続く。
「これなあに?」
「これはおしりを洗うためのボタンなのよ。でも子供はまだ使えないから勝手に押さないでね。」
「ふうん。なに、このごーっておと。」
「おしっこする音が聞こえないように水の音が流れてるのよ。」
「どうして?」
「それが恥ずかしい人もいるからよ。」

手洗いの流し台も色んな種類がある。手をかざすと中央から水が出て、左側から泡の石鹸、右側から温風が出るとか、目新しいタイプと出会うと、「わぁ。びっくりした!」「このといれ、すごいね。こんなの、どいつにないね。」と純粋に娘は驚き喜んでいて、私達にとってはトイレも結構退屈しのぎの場所になる。


最近のハイテクトイレとは全然違うけれど、また別の日本のトイレの話も書きたい。
冒頭の画像は「トイレ」という絵画作品。(長尾ふみ氏、油彩、2014年制作)
この絵には昨年夏の日本滞在時に銀座の画廊、ぎゃらりぃ朋での彼女の個展で出会った。最初に観た時「あぁ、面白い作品。そしてとても日本的な絵だ。」と思った。
というのは、このように上から水が流れて手が洗える仕組みになっているトイレというのを、私は海外で一度も見たことがない。ひょっとしたらこれは日本独自のものかもしれない。昨年夏3歳だった娘がオムツが外れて初めて日本の実家のトイレに入った時、「どうしてここでてをあらうの?」と私に聞いてきた。そう質問されて初めて、確かにこんなトイレ、ヨーロッパにないなと思った。そして数年前に義理の家族が日本滞在した時にドイツ人の義父がこのタイプのトイレを見て「このシステムは水と時間の節約になる。すばらしい発明だ!」と感心していたことを思い出した。私はずっとこれが当たり前で育ってきたので、そんなこと考えたこともなかった。ありふれたことも全く違う視点から観察すると、新鮮で別の意味を持ったものに見える。

この部分だけを描くことで「トイレ」を表現した長尾さんのセンス、落ち着いた色彩とシンプルな線の構成に惹かれたのもあったが、私の中のノスタルジーが、この小品から様々のことを思い出させた。実家のトイレ(もう少し新しいタイプだけれど)、昔どこかの公園で入ったトイレ、いつの日だったか地方の旅館で入ったトイレ、などなど古い記憶とシンクロするような感覚を得た。そして一度日本を離れなければ、この絵にこんなに魅力を感じることはなかっただろうと思い、このままこの作品と別れてしまうのが忍びなくて、ついその場で購入させていただいた。今この小品はドイツの自宅にある。
長尾ふみさんはまだ20代の方で、控えめな人柄だが芯の強さを感じるすてきな女性。これはたまたまトイレを題材にしたものだけれど、何気ない日常の一場面を、ホッパーのように静かな詩情豊かな表現で描く作風が多く、まだ若いのに地に足のついた仕事をされている今後が楽しみな作家さんだと思う。彼女の今年の個展は現在ぎゃらりぃ朋にて8月1日(土)まで開催中。


私達は先日またドイツへ戻ってきたが、帰路のANA機内のトイレでも、色々と驚かせてもらってまた娘と会話が弾んでしまった。彼女は今4歳。外出時にトイレの個室に一緒に入るのもあと何年のことだろう。
近い将来、個室の中で彼女の素朴な質問攻めにあった時のことを、懐かしく甘酸っぱく感じる日も来るのだろうな、とふと思った。



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by mikimics | 2015-07-26 19:38 | life | Comments(0)