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„めしあがれ” 視覚デザイン研究所 作 高原美和 絵

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2011年春に長女を出産して子供と生活するようになってから、未知の世界と出会い新しいドイツ社会とも知り合った。育児を通して感じたことも少しずつここに残しておきたいと思う。特に娘のおかげで知り合ったすばらしい絵本も紹介して行きたい。

めしあがれ” 視覚デザイン研究所 作 高原美和 絵

「ホットケーキめしあがれ」「シュークリームめしあがれ」とすべてのページには短い言葉しかなく、あとは画面全体に愛情深く丁寧に描かれたお菓子が広がっている。ページをめくるたびに美味しそうなお菓子が出てきて幸せな気持ちになれる絵本。挿絵を描いた水彩画家高原美和さんは私の大学時代の同級生。昨年日本に里帰りした時に、ちょうど出版されて間もないこの絵本を娘にプレゼントしていただいた。

私はこの絵本の中の絵は「イラスト」ではなく「絵画」だと思って眺めている。美和さんは限りなく実感を出すために、モチーフは用意されたものに加えて、できるだけ自分でも探し、作れるものは作り、できたての一番美味しい状態の時にスケッチしたと話してくれた。イチゴの光沢も、ケーキのスポンジのふわふわ感も、クッキーの香ばしさも、技術だけでなく本当に心をこめて描かないと、こうは美味しそうにならない。そして食器や背景もとても気配りされていて、例えばほとんどのページにスプーンやフォークが出てくるが、これが毎回デザインも材質も違う。このフォークはうちのと似てるね、こんな柄のカップもあったらいいね、なんて食べ物以外のものについても娘とよく話す。

またこれは現在の日本のお菓子文化を紹介した本だとも思う。そういう意味でもドイツで生まれた独日ダブルの娘にはずっと読ませ続けたい。ドイツではクリスマスケーキというものは存在しないし、もちろん似たような揚げたお菓子はたくさんあるけれど、穴の開いたドーナツを食べることもほとんどない。お団子とおせんべいを描いた和菓子の絵が一枚あり、良く知っているのに随分ご無沙汰していた風景を見たようで、私にはグッと来た。ミスタードーナツを懐かしく思い出し、お団子を口に入れた時の柔らかい感触、固めのしょうゆせんべいをかじった時の歯ざわりや音を想像した。さすが視覚デザイン研究所から出版された本だけあって、視覚から触覚・味覚・嗅覚・聴覚すべて刺激される。文章が少なくて絵で見せる本なので乳幼児から楽しめるし、内容・大きさ・価格、すべてにおいてぜひお勧めできる1冊だと思う。

1冊の絵本を通して子供の成長を知ることができるのも面白い発見だった。いただいた3ヶ月前に見たときと比べると、娘の語彙は随分増え着眼点もかなり変わった。これからまだまだ変化するのが楽しみである。
またデュッセルドルフ在住の方は、Nordcarree 10 の畳が敷いてあるユニークなキンダーカフェ Pantakeaの本棚の中から、この本を見つけることができます。

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by mikimics | 2013-02-10 11:28 | picture book