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カテゴリ:theater( 2 )

„Puppenbühne Bauchkribbeln” Theater Museum, Düsseldorf

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デュッセルドルフ町中にHofgarten ホーフガルテンという市民の憩いの場となっている大きな公園があり、その中に薄いピンクのクラシックな建物 Theater Museum 演劇博物館がある。ここは演劇関係品のコレクションを展示している博物館なのだが、時々舞台や人形劇なども上演される。
ここで月に1,2回開催される„Puppenbühne Bauchkribbeln” という人形劇を家族で鑑賞した。Bauchkribbelnとは、どきどきわくわくすることや緊張から、お腹がむずむずするという表現で、「おなかむずむずわくわく人形劇場」みたいな意味。Martina Burkandt氏という人形師の女性が、2003年からたったひとりですべてやっている。

毎月季節の行事などを題材にしたオリジナル劇を上演していて、今回の演目は"St. Martinus oder ich gehe mit meiner Laterne" 「聖人マルティヌス (=St. Martin)」の生涯の話。
ドイツで毎年11月11日頃に、St. Martin(ドイツ語発音はザンクト・マーティン)という聖人を祝う子供向けのカトリック伝統行事がある。毎年幼稚園や小学校で子供達は自分でランタンを作り、暗くなってからそれを明るく灯し、歌を歌いながら行列になって持ち歩くというもの。(実際にどのようなお祭りなのかは、友人が書いた記事がとても分かりやすいので、こちらをご覧下さい。)
聖マーティンは昔、凍え死にしそうな物乞いに自分の赤いマントを剣で切って半分分け与えたという慈悲深い人。洗礼を受けた後はさらに多くの人を助け、病の人を治すなどの奇跡も起こし、死後も人々に尊ばれ愛され、キリスト教の聖人になったという話。

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前回のブログに書いたマリオネット劇場は、より芸術性が高くどちらかというと成人向け劇なのに対し、今回は完全に子供向けの内容で、時々観客ともやりとりしながら劇が進められていく。人形達も糸で操られるのではなく、じかに手を入れて動かす仕組みで、表情も動きもとてもかわいい。「Für junge Leute von 3 bis 99 - 3歳から99歳までの若い人達へ」と謳われているように、大人が観ても十分楽しめる。会場に入ると一見して手作りと分かるすてきな舞台が目に入った。

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聖マーティンの人生を分かりやすくおかしく表現しながら、他人を思いやり分かち合う精神を大切にしようという内容の舞台。1時間20分もの劇だったけれど、どの子も最後まで良く観て参加していた。10人近い登場人物を全員声色を変えて演じ、同時に舞台背景、小道具、音楽、照明も変える。すべてMartinaさんの一人芝居。人形も衣装も舞台も全部彼女の手作り。ただただすごい仕事ぶり。
劇が終わるとMartinaさんは聖マーティン人形と共に出てきて、子供達全員に話しかけ、クッキーをふるまってくれた。「年に一度僕のこと思い出してくれてありがとう。思い出してくれる人達がいるから僕はずっと皆の心の中に生き続けられる。このクッキー、誰かと分けて食べてね。」という聖マーティンの言葉を聞きながら、子供達は一枚ずつクッキーを受け取った。
そして言われた通り自分でクッキーを割って、親や兄弟に配る子供達の様子を見ていたら、なんだか涙が出て来てしまった。本当に良いものを子供に提供したいという彼女の熱い思い、強い信念、隅々まで手を抜かない徹底した姿勢には、感動するだけでなく頭が下がる思いだった。

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気が付くとこれまで8回も経験して来たドイツの年間行事、大体こんなものと知っているつもりでいるけれど、時々まだまだ表面的な知識だと思い知らされる。Martinaさんは様々な場所で上演しているが、また来月も家から近いこの演劇博物館でクリスマスの劇があるので、彼女の愛情深い仕事を観て、私も色々と学ばせていただこうと思う。



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by mikimics | 2015-11-10 18:43 | theater | Comments(0)

Düsseldorfer Marionetten-Theater

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デュッセルドルフのAltstadt(アルトシュタット・旧市街)すぐそばの雰囲気がある通りにDüsseldorfer Marionetten-Theater マリオネット劇場がある。何度も前は通り掛っていて、以前から一度中に入ってみたいと思っていた。そして先週思いがけず急に子供のいない夜の時間が出来て、夫と何か観に行こうかということになり、二人ともまだ未体験だったこの劇場を試してみることにした。

来年で開館60周年記念になるというこの劇場は、座席数約100席のこぢんまりしたかわいらしい空間。道路に面した入口から裏庭に入り、少し歩いて奥の劇場にたどり着く途中に、人形を造る木工アトリエの建物もあり、外側から中の様子が窓ガラス越しに見える。劇場内のカフェもクラッシックなインテリアでとても上品な雰囲気で、総合的に上手く気分を盛り上げる造りになっていると思った。現在上演中の劇は世界的に有名なあの戯曲、Goethe ゲーテの「Faust ファウスト」で、かなり現代化された脚本になっていたが、おかげで私も初めてファウストの内容を知ることが出来た。

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幕が上がって人形達の動きを観ていたら、小学生の時にNHKで放送されていた人形劇「プリンプリン物語を思い出した。独特の世界観に引き込まれ、弟と一緒に食い入るように観たのを憶えている。子供の時に感動した遠い記憶は、こうしてふとした瞬間によみがえるものだと感じた。
マリオネットの人形は頭と手が異常に大きく作られていて、目、鼻、口のパーツも顔の中で最大限にデフォルメされている。小さな人形の表情や表現を遠くからでも分かりやすくするためだろう。近くで見ると少し異様な、人形によっては気味の悪い印象も受ける。今回のファウストに関しては、子供は10歳以上から鑑賞可能となっていた。確かに台詞も結構難しいし、悪魔が何度も出てきて恐ろしいシーンもある。

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初めてのマリオネット鑑賞は予想以上にすばらしく全く飽きさせない90分だった。小さな舞台の上で何度もシーンが変わって、その見せ方にひたすら感心するばかりだった。出て来るものは全部、糸でぶら下がっているという超ローテクな作りなのに、人形師のテクニック、舞台美術、音響、ライトの効果で、ものすごい迫力で別世界に連れて行かれた。
また舞台の袖から背景美術を動かす人形師の手が、偶然少し見えてしまった瞬間があった。でもその時、この「手」が人形に命を吹き込んで、背景を静かに揺らしたり、あっと驚く場面変化を生み出していると思うと、なんだかすっかり感動してしまった。私はもともと「手作業」という言葉が好きで、それが仕事の基本だと思っている。そして今回これほどまでに手作業を感じる芸術もないなと、改めて人形劇の奥深さを知った。

相当な数の役者人形が登場したけれど、それはすべて合計たった5人の人形師の仕事で、幕が下りると黒装束の彼らが挨拶に現れた。そしてその5人で脚本、舞台デザイン、人形作りなど、舞台本番前の仕事もすべてやっていることを後から知った。ノミで木を削り人形の身体を造り、それぞれの人形に合った洋服も手で縫う。小さくそしてものすごく愛情深い世界。
またこれまで生まれたすべて一点ものの人形達には、「Paten」(英語のgodfather/mother、名付け親)という親代わりのような支援者が必ずいて、そのリストが劇場に貼り出されていたのも興味深かった。人形には全員名前があり、誰のPatenはどこの誰、という具合に並んで書かれていた。Patenになるのにどういう契約になっているのか、どのような援助をしているのかは分からないけれど、こうして実在する人間と人形が結ばれることで、その存在価値が証明されているような気がした。

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この劇場は現状は何とか維持できているらしいが、慢性的な経営問題を抱えているという掲示があった。
あらゆるものがデジタル化されている現代においては、確かにマイナーで多くの観客が集まる芸術ではないと思うけれど、絶対に廃れて欲しくない守るべき魅力のある世界だと痛感した。私はもうすでにハマりそうな予感があり、毎月こっそり独りで観に来て異空間に浸りたい気持ちだし、数年後成長した娘とも一緒に観たいと思う。そして日本の伝統芸能の「文楽」も鑑賞してみたいと改めて思った。


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展示してあった「美女と野獣」のマリオネット

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by mikimics | 2015-09-15 19:11 | theater | Comments(0)