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Tagesmutter 保育ママ

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幼稚園入園前の1年半の間、私達は娘を週3日、Tagesmutter(保育ママ)に預けていた。このシステムはドイツではかなり普及されているもので、日本でも最近少しずつ広まって来ていると聞いている。Tagesmutter(「ターゲス・ムッター」と発音、昼間のママという意味。Tagesvater ターゲス・ファーター(保育パパ)ももちろんいる)とは、市の研修を受け資格を取得した人が自宅で3歳以下の子供を最大5人まで1度に預かる制度で(人数は預かる場所の広さによる)、日本同様ドイツにもある保育施設不足による待機児童問題などの緩和策の一つとして、利用者はかなり多い。

2012年末、娘が1歳8ヶ月になる頃、そろそろ娘の託児を始めようかと夫と相談した。私も少しずつ仕事を再開したいし、少々シャイな性格の娘にも社会性を持たせたい、でも私の仕事はフリーだし3歳まではできるだけ娘との時間も大切にしたいので週5日託児は多すぎる、という我々の希望を満たすのは保育園ではなく、Tagesmutterが良いだろうと考えた。そして何より日本ではまだ身近でないこのシステムを私が体験してみたかった。結果としてこの選択は我が家には正解だったと思う。私達は幸運にもとても良いTagesmutterと出会うことが出来たし、保育園よりもずっと家庭的で親身なケアを娘は彼女から受けることが出来た。3歳までの他人との信頼関係を育む大切な時期に、娘にたくさんの愛情を注いでもらって本当に感謝している。


我が家がお世話になったTagesmutter(Bさん)ついて少し書きたい。

私達は市のJugentamt(児童福祉局)内にある紹介所に登録し、Bさんを紹介してもらった。彼女は私より少し年下、未婚で出産経験もなく転職して資格を取ったばかりで、これから新しくTagesmutterを始めるという人だったので、その点が私達は最初は気になった。でも逆にそれだけにフレッシュでやる気があり、外国人新米ママの私の話も謙虚によく聞いてくれ、フレキシブルに対応してくれる印象を持った。彼女自身5人兄弟の末っ子、気さくで話しやすく、見るからに子供好きでまた子供からも好かれる雰囲気があり、頼りになるベテランではないけれど、一緒に相談しながらやって行けそうな気がした。そして子供達が自由に集う場所になるようにという構想を持って、数年前に中古で購入し自分で思い通りにリフォームした大きな庭のある家、彼女の愛情があらゆる所から感じられる、居心地の良いその場所を私達はすぐに気に入った。娘はここでこの人ときっと楽しく過ごせるだろうと、親としての直感があった。

そして2013年1月から、うちの娘と少し年下のドイツ人の女の子2人が彼女にとっての最初のTageskinder(昼間の子供)になった。それについては私は少し思う所があった。というのは私がドイツに来て間もなく自宅で絵画教室を始めた時、ドイツ人と日本人の男の子が2人最初に来てくれた。その後は口コミなどでどんどん生徒数が増えて行き、どの子供達も変わりなくかわいかったが、この2人は最後まで私にとって少し特別な存在だった。見ず知らずの私の所に子供を行かせようとよく決心して下さったと彼らの親にもずっと感謝の気持ちを持っていた。きっとBさんも最初の子供となる娘達に対しても、そういう感情を持って大切に接してくれるのではないかと想像した。「最初の子供」になるチャンスは1度しかないのだから、それに賭けてみようと思った。

Bさんの一日。7時~9時までの間に子供を預かり、必要な子には朝食をあげ、午前中お天気が良い日は近所の公園か自宅の庭で子供達を遊ばせ、12時に昼食を作り食べさせる。午後は13時から1~2時間のお昼寝タイム、起きた後はお菓子タイム、15時~16時に子供達お迎え。子供と遊びながら常に平行して4~5人の子供のオムツ替えやトイレの世話もあり忙しい中、携帯で撮った画像を毎日たくさん私達保護者に送ってくれた。子供がどんな風に過ごしているか親としては姿を見たいもので、その親心を汲んだ彼女の個人的サービスは、本当にありがたかった。

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またこのTagesmutterシステムで感心したことがいくつかあった。

市からの補助金について
行政の育児支援として、各家庭のTagesmutterへの費用に市から援助金が出る。その金額は両親の収入によって変わるので、まず両親の就労時間や収入金額などを書類で提出するのだが、我が家の場合は、夫は会社員なので会社を通じて書類を提出できるが、私は自由業で安定していないので書類が作成できない。なので私はこれまでして来た仕事の経歴と今後の予定などの個人的手紙を書き、ダメ元で児童福祉局に提出した。するとなんと我が家は全体で約3分1ほどの援助金が受け取れることになり、その通知が市から届いた時はドイツってすごいな~とただ感動した。そしてデュッセルドルフ市も応援してくれているんだから、もっと制作に励もうと素直に思えた。

代理システムについて
Tagesmutterが急に病気や何かの事情で仕事が出来なくなった時、代理で引き受けてくれるTagesmutterがまた別にいる。具体的に書くと、Bさんが登録している地区には計10人のTagesmutterがいるが、他に1人常時代理としてスタンバイしている。この地区の代理人はたまたまTagesvaterだったのだが、非常時でない普段は彼は定期的に10人のTagesmutterの所を訪れ、地区内の全員の子供と触れ合う。そうしておけば子供も急に知らない人の所へ預けられるということにはならないのである。娘がお世話になったBさんの所にも月に2回は来て子供達と遊んでくれていたので、娘も彼の名前をちゃんと憶えていた。これは本当にすばらしいシステムだと思う。

市の定期検査について
市の管理者が定期的(3ヶ月に1度位)にTagesmutterの家に点検に周り、安全面や仕事ぶりをチェックし、改善すべき問題点を指摘する。そして抜き打ちで保護者にも直接連絡をし、Tagesmutterについての意見や感想を調査する。突然家に電話が掛かって来た日は驚いたけれど、私達はBさんに満足していたので、できるだけ彼女のことを褒め、少し娘のことなども話した。担当の方は「お宅のお嬢さんにも何度か会いましたが、最初の頃と比べると随分しっかりして成長されましたね。幼稚園に上がるための良い経験を積んだと思いますよ。」と私達のこともよく憶えていてくれて、きめ細かい配慮に好感を持った。



Bさんの家での最後の託児日は、入園を心待ちにする半面、私達両親も1年半通ったこの家に来週からはもう来ないのかと思うと、少し寂しい気分でもあった。そしてBさんはお別れに娘にこんな素敵な手作りのバックと、彼女の家で楽しんでいる娘の写真をたくさん貼ったお手紙をプレゼントしてくれた。娘はこのバックを持って毎日元気に幼稚園に行っている。Bさんは私達にとって、初めて家族以外で信頼して娘を預けた人で、彼女との出会いは私のドイツ人生においても特別なものとなった。つい最近も彼女の提案でBさんの家を卒業した子供達と家族をお茶に招待していただき、久しぶりに懐かしい場所、仲間に会うことができ、娘もとても喜んでいた。今後もBさんには娘の成長を定期的に伝え、長く付き合っていきたいと思っている。Tagesmutterと相手の家庭との相性もあると思うが、3歳以下の子供の託児で愛情あふれる家庭的なケアを求めている方には、私はぜひお勧めしたい制度である。


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by mikimics | 2014-11-21 19:03 | life with kids